「未成年の子供を持つ親は2票分の投票権を」っておいおい

と思ったよ。以下、あくまでも個人的な感想。


少子化関連の記事では、結構ケッサクな提案を見かけることが多かったんだが。
個人的には、これが今までで一番びっくりした。

人口減ニッポン〜2030年からの警告(3)
出生率を1.66から2.0に回復させたフランスに学べ


こちらの2ページ目で提案されている「未成年の子供を持つ親は2票分の投票権を持つという選挙制度改革」には、ほんとにびっくりした。
まさか日経関連サイトでこんな主張を見かけるとはなあ。
というか、

少子化対策には予算が要る。昨年の出生率が2.0を上回ったフランスの例を出すまでもなく、これは否定しようのない事実だ。


という前提からして少々疑問を感じたのだが、それはまあさておき。


NB会員じゃない方のために概要を紹介すると。2ページ目では、「子供とその若い親の世代にもっと予算を使おう」と提案、そしてその財源確保のために、増税ではなく高齢者向けの歳出を削って子育て支援などに回してはどうか、とおっしゃっておられる。
日本の公的な社会保障給付費は、約70%が高齢者向けに支出され、少子化対策などに振り向けられているのは4%強にすぎないそうで。これを60対14にすれば、少子化対策に回るお金は今より9兆円増えるとのこと。


だけどなあ。
なんだかなあと感じたのは、この部分。

こういう考え方もある。未成年の子供を持つ親は2票分の投票権を持つという選挙制度改革だ。1票は自分の意志を反映させるために使い、残る1票は子供の将来の利益を守るために投じる。社会保障給付の使い道が70対4という極端なアンバランスになるのを許してきた遠因は、高齢者の意志が反映されやすい今の政治の仕組みにもある。


この方は、「未成年の子供を持つ人に高齢者の親がいる」というケースを考えていないのかなあ、と思った。
未成年の子供を持つ人が扶養義務を負うのは、未成年の子供だけじゃないでしょう。
高齢者が要介護な状態になったとき、面倒を見る義務が生じるのはその子供たちでは。

で、だ。
未成年の子供を持つ人といえば、現在10代後半〜50代前半くらいの人々、晩婚化傾向を考慮して最多層は30代〜50代前半かなと推測。
この世代の人は、その親世代と違って兄弟の数は2〜3人くらい、一人っ子も珍しくはないかも、って感じのはず。で、親世代は半数くらい、高齢者の域に入っているだろう。


仮にですよ。
かなり極端だが。一人っ子同士で結婚し、子供は中学生1人、そして夫婦それぞれの父母が存命・しかし寝たきりなどの要介護状態、さらに祖父母世代も2名存命・しかし寝たきりなどの要介護状態、そして父母・祖父母は全員国民年金のみ受給という状態を想定してみよう。
この場合、1世帯で面倒を見る高齢者は6名、扶養する未成年者は1名だ。
こういう状態のご夫婦に、高齢者に対する社会保障の予算と少子化対策にまわす予算、どちらを多くしてほしいかと聞いたら、「高齢者に対する社会保障の予算を多くしてくれ」と答えるんじゃないだろうか。


がっつり蓄財していてかつ非常にお元気な高齢者をデフォにして考えれば、確かに「若い子育て世帯に比べれば、恵まれている」と言えるのかも知れないが。
世の中、お元気な高齢者ばかりではない。
コムソンが何で大儲けしてきてたのかを考えれば、そのくらいすぐに察しがつくのではないだろうか。
介護疲れが原因の殺人・心中などのニュースも、しょっちゅう見かけますしのう。


よって。
未成年の子供を持つ人に2票分の投票権を与えても、「1票は自分の意志を反映させるために使い、残る1票は子供の将来の利益を守るために投じる」とは限らないのでは。と思った。
2票とも高齢者のため、自分の将来の利益を守るために投じるかもしれんよ。


余談だが、親が創●学会の人だったら、絶対に2票とも池●大●氏のために投じるだろうな。子供が反対したとしても。
創●に限らず。政治的な活動に熱心な団体の人たちが、2票分の投票権を獲得するために無理やり子供を産んだり、海外から養子を貰い受けたり(or買ったり)しちゃったりしてなー。なんてこともちょっと思った。


さらに余談だが。
では残る1票は子供本人に投票させよう、と考える方もおられるかと思うが、それもどうかと。
正真正銘の“右も左もわからない”お子様が多いだろうし。わけのわからんタレント議員ばかりが増える結果になりそうだ。
お子様が自分の意見を政治に反映させられないのはひどい、みたいに感じる人もいるようだけどさ。
そういう人は、自分が小学生・中学生だった頃の文集とかを読み返してみて、こんな知的レベルのお子様方に投票権を与えていいのものかどうか、と考えてみてはいかがかと思う。


さらにもうひとつ余談。
金があっても給食費を払わない親がいるという報道を、ここ最近たくさん見てきたんですけど。
最近見つけたのは、以下のページの後半部分。

「オトナを勉強させる学校が必要だ」

新人類って人の親になっても新人類のままなんだなー。ほんと理解不能
こんなふうにとんでもない注文をつけてくる親がごろごろしているせいで、学校が弁護士にバカ親対策を相談できるよう学校法律相談制度なんてもんを作った区もある、という状況下で、なんでそのバカ親も含む層に2票分の投票権を、なんて言えるかなー。恐ろしすぎ。


何より、特定の属性の人にのみ2票分の投票権を与えるという優遇措置をとるのは法の下の不平等ではないかと思う。1票分の投票権しか与えられない人々の人権が軽んじられているように感じる。
独身税だのとかいってた人権侵害上等(と考えているとしか思えない)某議員さんとか、子供を産まない女性に年金を与える必要なしと言った森氏@神の国と、実は同レベルな発想じゃないだろうか。


それになあ。
将来に不安を感じていたら、子供を産みびかえて当然だろう。
産んだはいいが、経済的に育てられません、てなことになったら。子供がかわいそうじゃないですか。
年金制度への不信感や、年功序列の崩壊に伴い生涯設計が立てづらくなったことなども、少子化の遠因じゃないのかなあ。


こんな状況で高齢者への保障の予算を削ったら、仮に現役高齢者がそれでいいと納得したとしても、若い子育て世代が「自分の老後のための蓄えもしなくては!」と焦ってしまって、ますます生活コストを抑制=第2子を産みびかえてしまうような気がしますなあ。
誰だっていずれは高齢者になるんだし。


あと。そもそも現状が非正規雇用な人の場合は、結婚にも踏み切れないのでは。出産・育児以前の問題。


格差と労働問題と年金問題をまず解決しないことには、どんな少子化対策を講じても税金の無駄遣いな気がする。


以上、所詮は素人の私見、取り急ぎの走り書き。後で意見が変わる可能性もあり。