転職を繰り返す人を面接することが多い採用担当者は頭の片隅においといて欲しいこと。

転職を繰り返す人は肝に銘じておいた方が良いこと。
http://d.hatena.ne.jp/takamoto8/20110525/1306297107


このエントリに激しく賛同した人は、いい会社での勤務経験しかないんだろうねーというのが正直な感想。
私もまあ大筋で同意。
しかし例外もあるんじゃない?みたいな話など。


1. 会社側に問題がある場合

前にいた会社で学んだことは何か?


入社前の話とは違い、既存サイトのメンテなどのルーチンしか担当させてもらえず、実務で新たに得られる知識・技術は何一つない、という場合もあるだろうから、学ぶことが何もない=学ぶ力がない、と言い切れない気がする。世の中、学ばせてくれる会社ばかりではないです。
そして実務じゃないと学べないこととかもあるし、実績を伴わない独学知識では評価されないこともある。
そういう会社に長居するということは、実績も積めないのに無駄に歳を食うというデメリットになることも。転職に有利な年齢の上限が迫ってる人ならなおさら、さっさと見切りをつけたくなるかもしれない。

なにより、スキルアップを1年怠れば知識や技術が陳腐化した用済み人材になりかねないWEB屋ならばなおさら、1年も経たずに辞めて最新技術に関われる環境に移りたくなっても無理はないかなと感じました。こういうのはもしかしたら、日進月歩なWEB系ならではの発想ですかね。

むしろ、前にいた会社で学んだことがあるという人は、育ててくれる・学ばせてくれるいい会社でもみすみす捨ててしまう人、いい会社にいても不満の種を見つけるのが得意なネガティブ上手と見られてしまうかもしれません。

そういう人を雇っても、ひととおり仕事を覚えてさあこれからバリバリ働いてもらおうという矢先につまらん理由で辞めてしまうとか、もう学ぶことはないからという「その人限定では向上心あふれるすばらしくもポジティブな理由だが、会社にとっては育て損としかいいようのない理由」で離職するかも、と疑われる可能性もある。

離職理由をどう解釈するかはほんと、その会社次第、採用担当者次第でしょうな。

前の会社の良かったところはどこか?

当初は魅力的に感じた部分もあったのではないだろうか?

前の会社を辞めた時、そういう状況になったのは誰に原因があるのか?自分ではないのか?


これは確かに、転職を繰り返している人はぜひしたほうがいい内省だと私も思いました。

しかし残念なことに、魅力的に感じられる部分を打ち消して有り余るほどのブラックな要素があるとか、会社情報では事実をかなり粉飾してるとか、そういうことを求人や面接の際にオープンにする会社はない、という点も忘れてはいかんでしょう。転職を繰り返している人ご本人も、こういう点を無視してすべては自分のせいと思い込んでしまわないよう注意が必要かと。客観的かつ公正に検証しないとむしろ人生ミスリードしてしまう恐れあり。


また、WEB系、特にEC系の場合、訪問販売とか実演販売系で暴力系な団体とももしかして繋がりが?みたいなヤバめ業者が、ネット販売に事業を拡大しようとしてWEBデザイナーやディレクターを募集する、なんて例もあります。

社長の左手の小指がなかったとか、社内には準構成員的な先輩方がひしめいていてマジで身体的に危険な環境だったとか、同期入社の人が先輩に殴り倒されて脳挫傷で入院しちゃったけど警察に被害届を出さないよう社長がじきじきに脅したらしいとか、入社したとたんに事業が180°方向転換し、違法じゃないけど詐欺くさいよねみたいな事業になっちゃったりとか、下手すると警察のお世話になりかねない内容のベージを作らされそうになったりなどなど、怪我する前に、または前科がつく前に早々に逃げ出さねば!みたいな事情により数ヶ月で離職することもあり得るわけです。

しかし、面接の際に前職のグチ・悪口をいうのはご法度というのが転職活動の基本ですし、特に詐欺くさい云々といった話を正直にしたらしたで、自分自身も犯罪者的集団の一員だったかのように見られてしまう恐れがありますし。

こういう場合なら、たとえコミュニケーション能力を疑われてしまう恐れがあるとしても「上司とうまくいかなくて…」などの転職理由を述べるほうがなんぼかマシ。


というわけで、うまが合う合わないとか、ワンマン経営が納得できず転職、なんて愛らしいレベルではなく、法的(労働法だけでなく商法、刑法、その他もろもろの法)・倫理的にどうよ、人としてどうよなレベルで問題のある会社、まっとうな神経の持ち主なら居続けられない会社というものも世の中にはあるのですよ。信じられないかもしれませんが。

そしてそういう会社ほど数多くの転職者を世に送り出しているし、ヤバイ事態になると書類上は倒産させて親族名義で別会社をささっと起こして事業を継続、ベンチャーづらして爽やかに求人を出したりするし。

そこまでひどい会社だと、自分はそういう会社に居た人間ですと言いたくないがゆえに、スキルアップとか人間関係がちょっと…みたいな、よくありがちな転職理由を語ることがあるかもしれません。


2. 会社は特に問題ないが上司に著しく問題がある場合


人間関係が原因で離職した人の場合、たいていは「離職した人の性格に問題がある」と思われるようですが、上司側のコミュニケーション能力が著しく劣っていたために離職に追い込まれるケースもあります。

上司が自己愛性人格障害とか、神経症で被害妄想っぽくなってるとか、本人気づいてないけど発達障がいがあるなど、部下がどうがんばっても良好な関係が築けないこともあるでしょう。

こういう上司ほど、本当に心のそこから何の疑いもなく「自分には非がない、全面的に相手が悪い」と考え、周囲にもそう主張します。

余談ですが、何故かこういう上司ほど、仕事では直接関わることがない部署や役員、社外の人にはウケがよかったり、社内政治が天才的に上手かったりするんですよね。積極奇異型なアスペルガーさんにはそういう人が多いんだったかな。

そしてそういう上司との人間関係が修復不可能なほど悪化してしまった場合、たいていは人事的な権限においてより弱いほう、つまり部下側が責任をとらされる。

そして社会的にも、辞めたほうに非があるように見られてしまう(非があるから辞めさせられたのだろうと思われてしまう)。

もちろん、それでも上司に逆らうべきじゃないとか、そういう相手でも円満な関係を築くのがコミュニケーション能力だとか社会人基礎力だと思う方も多いでしょうが。
そもそもコミュニケーションというものはどちらか一方だけに強いられた努力義務ではなく、理解しあおう、信頼関係を築こうと互いに努力して成立させるものではないでしょうか。この点ですごく思い違いをしている上司・役員が多いのではないかと常々感じています。
立場に胡坐かいて「さあ俺様に気を遣え、気持ちを読め」と要求し、それに上手く応えられることが「高いコミュニケーション能力」であると思っちゃってる、みたいな?

ましてや精神状態が不健全だったり人格に難があったりする上司が前述の俺様的なんちゃってコミュニケーションを要求している場合、ほんとに対応が難しいです。精神科医でもそういう人との関係構築には苦労するのではないでしょうかね。
相手が自身の問題に無自覚(=治療を受けているわけでもないので改善の見込みナシにして悪化の可能性はアリ)という状況だと、ほんと絶望的な気分になりますよ。
部下がそんな状況でがんばり続けても、心身どちらかもしくは両方を病んでしまうことでしょうよ。とことん頑張りぬいた挙句に鬱になって休職→失職、みたいな流れになってしまうよりも、病んで疲れきる前にさっさと転職し次の職場で活き活きと働くほうが賢明な選択でしょう。


もともとIT系、WEB系は、アスペルガーなどの発達障がいな人が好んで就きたがる分野らしいです。ITバブルとか言われた時代にWEBの世界に入ってきて平社員時代に実績を上げまくり出世した無自覚アスペルガーな人が、そろそろ独立したりマネージャクラスになってたりする頃合ではないかと。

つまり、「部下との人間関係にことごとくつまづいて辞めさせる&新たに求人を出す、ということを繰り返している上司 or 経営者」の生息率がそもそも高い分野かもしれないわけです。

そのため、ITやWEBの分野において「転職する先々で必ず人間関係につまずいてしまう人」は、自分のせいかもしれない可能性が確かに高いけれども、そもそも「新たに配属される部下と必ず上手くいかないコミュニケーション力難アリな上司」に運悪くめぐり合い続けちゃうケースが他業種に比べ高いかもしれない、という点も考慮すべきではと感じます。


以上、WEB系の経歴を持つ人の採用面接を担当する方は、以上のような事情もあるかもねーって程度にでもご認識いただけたらなあと思った次第です。


3. ぶっちゃけなそもそも論をしてしまうと


転職理由なんて聞いたところで正直に語るとは限らない、ていうか人間関係のトラブルが原因ならなおさら、普通は正直にそう言うはずがない。と思ってましたが、最近は正直な転職者が多いんだろうか。
転職回数の多さについては、WEB系IT系に限らずマスコミ系、紙媒体系も、回数が多くても特に不自然じゃないんじゃないかなーと思われます。多くて当たり前ってわけでもないけど。

メディア系に限らず、新卒で非正規雇用とかリストラとかが珍しくもないこんなご時世では、転職理由や回数は採用可否の判断材料にならない項目になりつつあるんじゃないか、とも感じています。

終身雇用は崩壊したとかずいぶん前から言われているのに、「よほどのことがない限り転職はするもんじゃない」とか「転職回数の多い人は性格的に問題がある」みたいな考え方だけは年功序列・終身雇用な時代から変わってないのかなあという気がしてなりません。

企業側に都合のいい金銭的な面については年功序列・終身雇用を崩壊させたけど、それ以外は旧態依然でおk、みたいな不自然さというか違和感というか。



転職回数○回以内の人とかいう応募条件を出している求人情報を時々見かけますが、私はこの情報を「頭の固い人、古い考えの人が君臨している企業 = 発展性・将来性に難がありそうな企業」と読み解いてます。

コミュニケーション能力が高い人、という条件付の求人(常に同じ職種の求人)を1〜2ヶ月おきに出している企業もありますが、これは「在職者側(おそらく採用予定者の上司)の人格等に問題があるので人が居つかないのだが、在職者側はそれを認めず、今まで辞めていった人たちのコミュニケーション力に難があったと硬く信じ込んでいる」というケースかなと見当をつけています。

そういう企業の役員や上司ほど、自社の離職率の高さをいまどきの若者論や大学教育の質、ゆとり教育がどうしたとかいう話にすり替えて、声高に教育批判してるんだろうなーとも思ってます。超買い手市場というぬるま湯につかりすぎたせいで、人事部などの採用担当者が気付かぬうちに傲慢になり、人を見る目を衰えさせてしまってるんじゃないかと。

離職率の高さは自社の体制や在職者に原因があるのではないか? 辞めさせた社員にも良かったところはないか? いいと思う点があったから雇ったのでは? と冷静に考えてみていただきたいものです。


ていうか最近、どんな職種でもコミュニケーション能力を強く求めすぎているような気がします。
技術力も高くコミュニケーション能力も高く企画力もある人希望、というようなマルチにハイレベルな能力を求めておきながら年収300万以下みたいな愉快すぎる求人を時々見かけますが、いくらなんでも高望みしすぎでは。「備わるを一人に求むること無かれ」と孔子もおっしゃってますし。

そこまでマルチな人ならそもそも人に雇われる必要がない、独立して食っていける。つまりそんな人はそもそも応募してこない、となぜ気付かないのかなーと不思議でなりません。妥協して項目をいくつか削除すべきではないかと。

WEBデザイナーの求人なら、コミュニケーション能力について多少大目に見れば、技術的に優秀な人材を確保できる可能性が高いんじゃないかと、経験的にはそう感じます。
WEBディレクターだとコミュニケーション能力重視でしょうか。
WEBディレクター兼WEBデザイナーの求人は、敷居が激高すぎの無茶ぶりしすぎ、ていうかその双方において能力高い人なら独立するだろうよ、と思ってしまうところです。


そして業種を問わず。
転職したいと考えている人は、転職先が現職よりマシとは限らないし、世の中下には下があるのだということをどうかお忘れなきよう
転職先はパラダイスとは限りません。隣の芝は青く着色されただけの枯れ草かも。
現状に不満しか見出せない人は、高い確率で次の職場でも不満のネタを見つけ出すことでしょう。
レベルアップでき、かつ現職を円満に辞められる形の転職以外はできるだけしないほうがいいですよ、と経験者は語ってみる。
しかし精神的もしくは肉体的に甚大な被害を受ける恐れがある職場なら、すぐ逃げるべし。



4. ついでのおまけ話。

辞めた会社の文句をTwitterでつぶやいたりしているのを見かけると


この一文を読んで思い出した、私が過去に面接したWEBデザイナーさんたちのびっくり事例ベスト3。

  1. これまでに応募して落ちた会社の悪口を自分のポートフォリオサイトに掲載
  2. 辞めた会社のグチ・文句を自分のポートフォリオサイトに掲載(それも超長文にして粘着な内容)
  3. 中国某遊園地の巨大立像なんてかわいいもんだぞ♪ というくらい明白に著作権違反な画像データ(本人曰くイラレでの作画力を示すための制作見本)を収めたCDを履歴書・職歴書に添えて提出

こんなポートフォリオのURLを提示してくる・制作見本を提出するなんて、これは何が何でも採用されたくないという意思表示か?と思わずにはいられませんでした。ていうかホビロン
もし以上のことを現在やっちゃってる人がいらっしゃいましたら、即刻やめたほうがいいですよ。