厚生労働省の不祥事と少子化報道


以前、独身税をこさえて少子化対策の財源にしてはどうか、という提案をした議員がいたが(たしか自民党の人だった)。

独身税に関する議論を調べてまわったら、その議員がそんなことを言い出す何ヵ月も前に、政府の諮問会議かなんか(詳しくは忘れた)でエライ人が「独身税は人権問題の見地から無理、国際法に抵触する」というようなことを言っていたことを知りまして。
もうずいぶん前のことなので、発言内容はちょっとうろ覚えだが。
探せば、ネット上で議事録を見つけられると思いますので、興味がある人は自分でググってください。

その議事録を読んだ時、
少子化について提言するならば当然、この議事録も読んでいるはずだろう。人権侵害のそしりを受けてでも独身税を課すべきだと主張したいのだろうか。それとも不勉強なんだろうか>某議員
と思った。

ちなみに、その会議でも公明党の議員が独身税はどうか、ということを言っていて、与党は「いいトシして子ナシ独身」な人がほんとに嫌いなんだなあと思ったもんですが。

後で気付いたが、どこどこの誰々が独身税を提案、みたいなニュースが流れたときは、その数日前か数日後か、もしくは当日だったかに、確かグリーンピアに関するニュースが流れていた。

年金問題に興味を持ちそうな人の目を公的年金運用の件からそらすために、実現はほぼ不可能と知りつつ「独身税を!」と騒ぎ立てていたのだろうか、もしかして。
と思った。
が、この時点では、そりゃいくらなんでも考えすぎかな、とも思っていた。

しかし。
一時期は毎日のように少子化に関する報道が流れていたというのに、ポスト小泉争いが本格化した頃からぱったり聞かなくなったなあ、と思っていたが。
これも後から考えてみると、グリーンピアの処理にかたがついた(らしい)=もうグリーンピアの件で新しいニュースは流れないだろうな、という状況になったとたんに少子化報道が絶えた、という気がしないでもない。

もしかしたら、公的年金の運用について批判が高まっていた時期に、上手い具合に酒井順子さんが著書『負け犬の遠吠え』の中で「少子化は負け犬(女)の存在が原因」と言い放った。
それに便乗して「少子化は女性の晩婚・晩産だけが原因=よって年金崩壊」という印象をつい持ってしまうような報道をマスコミに行なわせ(意図的に?)、一方で議員や有識者独身税とか言わせてみたりして、公的年金運用問題から目をそらさせたのかなあ、なんて。
やはり疑念がぬぐえないというか。

管理職クラスが多くいるであろうご年配層には、社会情勢の変化だの過剰な人件費削減による若年低所得者層の増加が原因だ、と主張しても受け入れられない可能性がある。自分に非はないと誰だって思いたい。逆切れして「公的年金の運用に問題があったからじゃないのか」と言い出すかもしれない。

しかし、昔ながらの儒教的価値観にのっとった「女が社会進出したから/わがままになって結婚しなくなったから/子どもを生まなくなったから少子化が進んだ=女が悪い」という論調ならば、ご年配の方には非常に受け入れやすいことだろう。その世代には、いわゆる「経済的に自立した女性」も少なそうだし。
『負け犬の遠吠え』の存在がその傾向に拍車をかけたかもしれない。

余談。1年ほど前に『負け犬の遠吠え』を読みましたが、こりゃ反感くらって当然だなーという感想を持った。ていうか、新人類が青春を謳歌していた頃に流行っていたという覚えがある、「ヘンタイよい子」とか「食う寝る遊ぶ」とかっていうコピーが、読んでいる間、頭の中をグルグルしてた。

苦労せずに就職できたバブル世代で、かつ社会人経験は広告代理店でのお勤め3年、ていう人で、かつ、「成熟した成人として、社会を構成する一員の自覚と責任を引き受けることを拒否し、社会そのものが一つのフィクション(物語)であるという立場をとる新人類」という定義にたぶんばっちり当てはまる女性の言うことを、真に受けちゃいかんだろ。三十路になっても今なお新人類やっていらっしゃるようだ。というのが最終的な感想。
また、自虐ネタで糊口をしのぐ系ライターが発したウケ狙いのネタにマジレスしてるようなもんじゃないかね>世論、とも思った。


本題に戻って。

最近、柳沢厚生労働相の「女性は産む機械」発言でマスコミがにぎわっていたが、それに合わせるかのように少子化・年金に関する発表のニュースも、また流れ出した。
そして今日報道された、柳沢厚生労働相の「子ども2人以上「健全」」発言でますます炎上となったわけだが、これまたそれに合わせるかのように「年金給付、最高で現役収入の51.6%=出生率1.26で新試算−厚労省」(2月6日/時事通信)という、先日の発表と大差ないようなニュースがしつこく流れている。

厚生労働省は、自分たちが叩かれそうになると『年金・少子化に絡む(たいていは悲観的な)発表』をしているような、という気がしてくるですよ。
単にフェミを黙らせたいがために、少子化は女のせいとにおわすような主張をしているんじゃないだろうかね。
だとしたら、巻き添えを食らっていい迷惑なんだがな。人権を尊重すべき国民としてカウントされてないようですなー、子ナシ女性は。

なお、柳沢厚生労働相の「子ども2人以上「健全」」発言↓についての個人的感想は。
健全という表現に引っかかりは覚えるけれども、

若い人たちの雇用形態が、例えば婚姻状況などに強い相関関係を持ち、雇用が安定すれば婚姻率も高まるような状況なので、まず若者に安定した雇用の場を与えていかなければいけない

<柳沢厚労相>子ども2人以上「健全」発言、波紋に拍車 (2月6日/毎日新聞

という部分は、今までの厚労省発の情報と比較しても、かなりまともなことおっしゃっている部類じゃないかなーと感じた。
が、

本当にそういう若者の健全な、なんというか希望というものに我々がフィットした政策を出していくことが非常に大事だと思っている

<柳沢厚労相>子ども2人以上「健全」発言、波紋に拍車 (2月6日/毎日新聞

ここはどうよ、と思った。
少子化については、懸念され始めてからもう10年くらい経ってるんじゃないだろうか。
総人口の減少に至って、本格的に問題視され始めてから考えても、もう1〜2年は経っているはずでは。
なのに、なんでいまだに「政策を出していくことが非常に大事だと思っている」という段階なんだろう。
成果主義な企業だったら、もうとっくの昔にリストラ対象じゃないかなあ、とか。
女性蔑視だとばかり騒いで、そっちにつっこみをいれる野党な議員が少ないみたいなんで、試しに書いてみた。
さっさと対策を考えてあげないとさー。第2子を生みたいけど経済的に断念しちゃってる女性たちがまだ若いうちにさ。

ついでに、この発言の「健全な」という部分を問題視しない自民党の姿勢には、ドン引きした。
「女性は産む機械」発言の時は、不適切な表現だが、あまりにも揚げ足取り過ぎないかねえ、という印象でしたが。今回は本気でドン引き。ほんとに美しい国だな、脳内の花は。
自由民主党ではなく、管理統一国主党ってなかんじの名称に改めるべきでは。と思いましたわ。

にしても、労働環境は現状ママで成果主義だけ浸透して、一方で少子化対策だけ進めると、子どもを生んだはいいけど最も学費がかかる頃に親が成果主義に打ち破れて中高年ニートになっちゃいました、という悲惨な状況が、後々社会問題化しそうな。
若者正社員@低賃金や若いフリーター、若いニートだけでなく、中高年の再チャレンジ支援も視野に入れてあげないといかんのでは。
とにかく産ませりゃ後は何とかなるとでも思っているんだろうかね。

以上、取り急ぎの覚書。思いつくまま書いたので、そのうち考えが変わる可能性もアリ。
というレベルのものとしてお受け止めください。